神学入門 06
神学 聖書学03
旧約神学
聖書学には、旧約神学、新約神学と呼ばれる科目がある。旧約全体、新約全体の特徴を、その特徴の成立(歴史的な流れ)を踏まえて考察するのが旧約神学、新約神学と呼ばれる科目である。
ちなみに、わたしは旧約聖書、新約聖書とはできるだけ言わないようにしている。キリスト教にとって、聖書は旧約聖書と新約聖書の2冊あるのではなく、聖書(英 the Bible)は1冊であり、聖書の中に旧約(英 the Old Testament)と呼ばれるものと、新約(英 the New Testament)と呼ばれるものがあるという理解は大切だと考えているからである。
旧約緒論が旧約39巻をそれぞれに歴史的課題を挙げて(誰が書いたのか、どのような状況で書かれたのかなど)論ずるのに対して、旧約神学は、旧約全体の特徴を理解するためのテーマを挙げて論じていく。
手元に『旧約聖書神学事典』(東京神学大学神学会 編、教文館、1983年発行)という本がある。目次から項目をいくつか挙げてみる。「愛」「怒り」「選び」「神の像」「救済」「契約」「死後の生」「信仰」「聖戦」「創造」「罪」「預言者」など。
こういったテーマについて、旧約は何と言っているのか、を検討するのが旧約神学である。
同じテーマであっても、旧約の中で違いが出てくるものもある。
例えば、「愛」という言葉は、旧約の30の書に出てくる。愛と訳されるヘブライ語は同じなのか、あるいは愛と訳されるそれぞれの単語の特徴は何か、各書によって愛の特徴に違いはないのか、など丁寧に聖書を読んで検討していくのである。
この過程に、歴史学的な手法や判断が入ってきて、旧約神学を少々面倒なものにしてしまっているが、旧約神学の本論は、旧約を通して、神がわたしたちに何を告げておられるのかを明らかにしようとすることである。(牧師の務めは、文書仮説などの神学を説明することではなく、聖書を通して神を指し示す(証しする)ことである。)
他の科目も同様だが、旧約神学を学ぶ際に大切なのは、神学書だけを読んで理解しようとするのではなく、時間はかかるが、神学書に出てくる聖書の箇所を一つ一つ開いて、聖書をきちんと読むことである。そうしていくと、聖書を味わい、聖書に根ざした神学を楽しむことができる。
主は生きておられる(エレミヤ 4:2 新共同訳)