聖書の言葉を聴きながら

一緒に聖書を読んでみませんか

神学入門 04

神学 聖書学01

聖書学の第一の務め

 神学諸学科の中で第一のものは、聖書学である。
 その理由は、聖書学の第一の務めが、聖書本文の保存だからである。
 「われわれに伝えられた聖書の本文はすべて写本によるもので、聖書の原本というものは存在していない」(日本聖書協会のウェブサイトから)。

 神学は、聖書に基づいてなされる。従って、聖書の本文が保存されることは、神学にとって一番の基本であり、また信仰にとっても最も大切な事柄となる。
 写本には、様々の異同がある。筆写作業中の誤記、加筆、削除などが考えられる。聖書を翻訳するには、本文を確定する必要がある。そこで本文批評(ほんもんひひょう)と呼ばれる作業が行われる。
 「本文批評とは、ある文書の現存する写本から、理論的に可能な限り、その文書の元来の形(英語: Archetype)の再構成を目指す作業のこと。その手段となるのが、書誌学や文献学である。英米には、本文批評と書誌学を一体にした「本文書誌学」(Textual Bibliography)が存在する。なお、本文批評は本文批判、正文批判(正文批評)、テキスト批判(テキスト批評)、下等批判(下等批評)とも呼ばれる。聖書研究の保守陣営からは聖書批評学と呼ばれることがある」(ウィキペディアから)。

 この本文批評を経て、聖書翻訳する際の底本となるものが作成される。『新共同訳聖書』(日本聖書協会発行)と一般に呼ばれる聖書の場合、旧約の底本は『ビブリア・ヘブライカ・シュトットガルテンシア』(ドイツ聖書協会)、新約の底本は『ギリシア語新約聖書(修正第三版)』(聖書協会世界連盟)である。
 最近では、本文の異同等について脚注で説明を加える翻訳も出ている。例えば、「フランシスコ会聖書研究所 訳注の聖書」や「岩波書店が発行している旧約聖書翻訳委員会、新約聖書翻訳委員会訳のもの」がある。なお、岩波書店発行のものは、聖書学の成果を取り入れてなのか、聖書各書の順番を勝手に変更したり、読み方が失われてしまった神名を「ヤハウェ」としてしまっていることなどから、聖書とすんなり呼ぶことにわたしは抵抗がある。

 聖書学には、緒論・神学・釈義といった科目があるが、聖書学の第一の務めは、聖書本文の保存である。
 聖書学がこの務めを果たしているからこそ、今わたしたちは(日本語の)聖書を手にし、(日本語で)聖書を読むことができるのである。

主は生きておられる(エレミヤ 4:2 新共同訳)